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pic素材を知る2023年11月27日

レジ袋にお米由来のプラスチックを採用!コープさっぽろがライスレジン導入を決めたわけとは

廃棄されるお米を原料にした国産バイオマスプラスチック「ライスレジン®」の導入が全国で進んでいます。コープさっぽろではライスレジン製のレジ袋を開発し、今年10月から全店舗にて販売スタート。この取り組みに至った経緯と、これからの展望について、コープさっぽろの石塚さん、ニトリパブリックの野中さん、松田さんにお話を伺いました。

レジ袋にライスレジンを採用したきっかけ

三井物産プラスチック古賀:2021年10月に、弊社が扱うお米由来の樹脂「ライスレジン®」がテレビ東京系列の「ガイアの夜明け」で特集され、それをコープさっぽろ様が見てくださり、ニトリグループの広告会社・商社であるニトリパブリック様を介してお問合せくださったんですよね。

ニトリパブリック野中:弊社はかねてより、ニトリグループのサプライチェーンを活用してコープさっぽろ様の備品・資材類の調達コスト削減のお手伝いをさせていただいているので、ライスレジン®について最初に知ったときにコープさっぽろ様にぴったりな新素材だと思いました。北海道には米どころも多いので、将来的には道産のお米でレジ袋を作れるといいですね、などとお話していました。

コープさっぽろ石塚:全国でレジ袋が有料化されたのは2020年7月ですが、私たちはそれより13年ほど前からレジ袋使用の辞退率を上げるために様々な取り組みを行ってきました。さらにできることはないか探していたときに、ちょうど「ガイアの夜明け」を見て、これだ!と思ったのです。

三井物産プラスチック古賀:これまで取り組んでこられたレジ袋削減について、改めて伺えますか?

コープさっぽろ石塚:まず、2008年に全国に先駆けてレジ袋を有料化しました。ただ、私たちだけで行ってもインパクトは限られるため、イオン北海道さんとアークスさんの2社にも声をかけ、共同で有料化を実現することにしたのです。実は北海道内の食品スーパーの売り上げはこの3社でほぼシェアしているため、競合ではありますが協力することで大きな流れができると考えたんですね。有料化を始めてしばらくして、辞退率は60~65%まで上がりました。大幅にレジ袋を削減できたと言えますが、ここからが難しい。高止まりの状況が続いたので、さらに辞退率を上げるために、エコバッグの製作を始めました。

オリジナルバッグでレジ袋辞退率が大幅に向上

ニトリパブリック野中:コープさっぽろ様のオリジナルエコマイバッグを製作したのは2008年です。もともとニトリで環境負荷の低いジュート(黄麻)製品を作っていたこともあり、こちらのバッグも弊社で製作しています。思わず使いたくなるようなバッグにすることで、レジ袋の使用を抑制しようというねらいで製作したのですが、これが大変好評なんです。毎年7万枚配布・販売しており、道外からも入手方法の問い合わせをいただくほどになりました※。
※生活協同組合の規定上、道外での販売はできません。

コープさっぽろ石塚:このバッグは底面が大きく、スーパーのかごと同じサイズなので、レジでかごの中にバッグを入れ、チェッカーさんがそこに直接品物を入れるしくみになっています。そのため、お客様は自分で袋詰めする必要がなく、レジが終わればそのまま持ち帰れるため時短にもなります。しっかりした作りで重い荷物でも型崩れしないので、持ちやすいと好評です。

ニトリパブリック野中:デザインにも非常にこだわっているので、毎年新しいデザインのものを購入されるお客様もいらっしゃるんです。デザイナーは札幌出身の梶原加奈子さんにお願いし、北海道の自然をイメージした美しいデザインに。素材はエコ素材と言われるジュートという麻を使用しています。このバッグを始めて10年ほど経ちますが、人気があるだけでなく、レジ袋辞退率も89%まで引き上げてくれました。

三井物産プラスチック古賀:コープさっぽろ様はこういった組合員様のファン化が非常に得意でいらっしゃるので、全国のスーパーや小売店の皆さまも参考になることが多いのではないでしょうか。

コープさっぽろ石塚:組合員様は環境配慮への関心が高い方が多いというのも影響しているかもしれません。私たちは毎年、海水浴場の清掃活動を行っているのですが、それに1万人以上の組合員様が集まってくださるんです。ペットボトルのリサイクルにも繋がるので、今では大手飲料メーカーの方々も参加してくださるほどの規模になりました。

理想のレジ袋開発に苦心した1年間

三井物産プラスチック古賀:レジ袋有料化とエコマイバッグの普及が功を奏し、辞退率は向上しましたが、さらにレジ袋の素材を変更されていますよね。

コープさっぽろ石塚:そうですね、レジ袋の使用量を減らすのと並行して、レジ袋自体の石油使用量も減らそうと考えました。2015年にサトウキビ由来のポリエチレン樹脂を配合したレジ袋に、さらに2021年には石灰石由来の樹脂を配合したレジ袋に転換しました。

ニトリパブリック野中:2015年と比べると、現在はバイオプラスチックは世界中で取り合いになり、価格も高騰しています。調達の不安から国内で入手できる石灰石由来の樹脂に転換したのですが、さらに良い原料がないか検討していたところでした。そんな時に「ガイアの夜明け」でライスレジンを知り、国内外での販売活動を担っている三井物産プラスチックさんに相談したら、すぐやりましょう!と、とんとん拍子で話が進んでいきましたよね。

三井物産プラスチック古賀:でも、ここからが時間がかかってしまいましたね…(笑)。ライスレジンはテレビ放映の影響もあって問い合わせが殺到している状況だったのですが、新素材なので扱ったことがない加工業者さんがほとんどだったんですね。通常のポリエチレンに慣れている現場からすると、通常のポリエチレン樹脂のみを用いて製造する際の設定条件との比較でどんな調整をすればよいかわからないわけです。ライスレジン®は普通の樹脂にお米が入っているので、温度の微調整が必要。加工温度をどれくらい下げればよいかなど、何度も打ち合せてトライアルを重ねました。

ニトリパブリック野中:コロナ禍というのもあり、なかなか製造現場である中国の工場に行けないというのもネックでしたね。それでもオンラインでつないでなんとか調整してもらいました。

ニトリパブリック松田:ライスレジンのレジ袋の試作品は、トータル7回作りました。価格面というよりは、品質面の安定に苦労しましたね。最初の試作品は色も茶色でおせんべいのような香ばしさでした。お米が入っていると表面がざらつくので、どこまでそれを許容するかという問題もあって。ようやく5回目の試作で製袋に辿り着きました。

コープさっぽろ石塚:数円といえども、売り物なので、お金をいただく以上は商品としてこだわりを持って作りました。コープさっぽろへの信用、期待が高い分、そういう方には真面目に真摯に向き合いたいという思いがあります。レジ袋は強度に加えて開きやすいかどうかも重要なので、イメージの質感になるまで、何度も作り直してもらいましたね。

三井物産プラスチック古賀:2回目の試作以降、何度かライスレジンの原料メーカーであるバイオマスレジン南魚沼さんにもアドバイザーとして入ってもらいました。工場のある大連と東京、札幌、魚沼の4拠点をつなぎ、工場の機械を映しながらやりとりしましたね。コープさっぽろ様がイメージされているレジ袋のシャリシャリとした質感を実現するには、高密度のポリエチレンを用いる必要があるのですが、フィルム用途では本来ライスレジンは低密度のポリエチレンとのブレンドの方が比較的相性が良いもの。そのため、難しいシャリシャリ感を出すための微調整に試行錯誤しました。これが実現できたというのは、すごい進歩なのです。

コープさっぽろが描く将来展望

ニトリパブリック野中:量産に成功したのは今年の4月なので、開発から完成まで1年以上かかりました。苦労して作ったレジ袋ですが、告知したのは公式サイトのみ。コープさっぽろ様の意向で、店舗での大々的なPRは行わないことになりました。

コープさっぽろ石塚:実は当時も上層部から、ポスターなどを掲示してお米由来のレジ袋であることを広めたらよいと言われたのですが、この取り組みを始めた本来の目的は、レジ袋の使用をやめることです。そのため、レジ袋のPRは本末転倒だと考え、あえてPRしないことを選択したのです。ただ、組合員様に感想を伺うと、評判はとっても良かったですね。乾燥する季節などはレジ袋が開きづらく、苦戦する方もいらっしゃるのですが、新しいレジ袋は開きやすいとのことでした。また、従来のレジ袋は、商品の角が当たるとタテに裂けやすかったのが、今回は裂けにくいと。チェッカーさんも使いやすいと喜んでくれていたので、安心しました。

ニトリパブリック野中:今年の5月にまずは一部の店舗でテスト導入し、気温によってトラブルなどがないかを確認しました。問題がなかったので、当初の予定より早めて10月から全店舗に導入しています。現在はコープさっぽろ様の取り組みとしてスタートを切ったばかりですが、今後はもっと普及させていきたいですね。そうなれば価格ももっと下がってくるでしょう。エコバッグと同様、道外からの問い合わせもいただいているので、ここからもっと展開していくのを期待しています。

三井物産プラスチック古賀:ライスレジンの原料メーカーであるバイオマスレジンホールディングスさんは、今年からJAひがしかわと資源米作りで連携を開始しました。東川町様も含めた包括提携も締結され、ライスレジン用の資源米を試験栽培しています。北海道内で生まれた資源米由来のレジ袋がコープさっぽろに並ぶのも、そう遠くない未来かもしれませんね。

コープさっぽろ石塚:私たちの悲願は、北海道のお米を使ってレジ袋を作ることです。コープさっぽろは米どころである東川町と30年以上にわたり、お米を通じた産直交流を行っており、非常に深い縁があります。近年は休耕田が増加し、重大な地域課題となっているので、東川町のお米を活用できれば地域への貢献にもなります。そのためには道内でのライスレジンの需要が高まることが不可欠です。将来的には精米袋にライスレジンを使用し、コープで販売するのが理想ですね。

ライスレジンレジ袋は開けやすい。多くの方に実感いただけている

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コープさっぽろ ほんどおり店 店長のお話
ライスレジンレジ袋の導入前は「レジ袋が開きにくい」という声をいただくことが多くて、(指先を湿らせる)アルコールを置くことで対応しました。今はそのような声を聞くことがほとんど無いですね。事実として、ライスレジンレジ袋は格段に開きやすいんです。(以前の袋とは)全然違います。
ライスレジンレジ袋導入が決まってから、店頭で「レジ袋が替わります」といったようなお知らせは特にしなかったんです。にも関わらず、お客様から「最近、レジ袋が開きやすくなったね」といったような声をいただいたんです。マイバッグ率は確かに高いですが、レジ袋もいまだに多く出ています。ライスレジン製レジ袋の「開けやすい」というメリットは、多くの方に実感いただけてると思いますよ。

PROFILE
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石塚紀夫さん
生活協同組合コープさっぽろ
店舗本部 サービス事業部 部長
北海道フードマイスター

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野中毅さん
株式会社 ニトリパブリック
執行役員 営業部ゼネラルマネージャー
ビジネスプランナー/MDプランナー
ISO内部監査員
北海道SDGs推進プラットフォームメンバー

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松田良介さん
株式会社 ニトリパブリック
営業1部 グローバルビジネス推進チーム
営業企画 チーフ
北海道SDGs推進プラットフォームメンバー

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古賀晋一
三井物産プラスチック株式会社 産業材料本部 バイオ樹脂ユニット長。1999年入社。ポリエチレン、ポリプロピレンをはじめとする各種合成樹脂原料、包装・物流・農業生産資材などの合成樹脂製品、硫酸・過酸化水素などの無機化学品原料を経験。本店、北海道支店、三井物産(香港)有限公司、四国支店などの勤務を経て、2019年10月1日付で新設されたバイオ樹脂ユニットにて、来たる脱炭素社会の実現に向けたバイオマス、リサイクル、生分解の各種材料・製品分野に従事。

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