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pic素材を知る2023年9月15日

冷蔵と鮮度保持フィルムがシャインマスカット長寿命化の鍵

生産者も、小売も、消費者も。
エクステンドによる長期貯蔵でみんなを笑顔に

爽やかな香りと上品な味わいが特長の高級フルーツ、シャインマスカット。
市場にお目見えしたのが今から十数年前。その後、流通量が増えるとともにその名前と美味しさが認知され、人気が全国に広がっていったのはご存知の通り。生産量が増えた現在も、その勢いは衰えることがありません。実はこのシャインマスカット、長期貯蔵実験が各地で行われているのをご存知でしょうか? その目的は、通常は9-10月頃が旬と言われるシャインマスカットを長寿命化し、クリスマスやお正月シーズンに出荷。人気のシャインマスカットを食べられる時期が延びることで、消費者も嬉しく、生産者からはさらなる売上アップが期待されています。この長寿命化の鍵を握るのが、イスラエルのStePac社が製造する鮮度保持フィルム「エクステンド・Xtend®」です。
昨年はじめてシャインマスカットの長期貯蔵にチャレンジし「『これはいける』と実感した」と語るのは、株式会社katerial 代表取締役社長 長谷部 福美さん。鮮度保持フィルム エクステンド・Xtend®のこと、また青果の長寿命化がどんな新しい世界を拓くのか、くわしく話を聞きました。

出荷時期を2ヶ月延長!エクステンドの驚きの効果

今回訪問したのは、長谷部さんが代表を務めるkaterialがある山梨県・甲斐市。倉庫内の業務用冷蔵庫にシャインマスカットが貯蔵されており、今年8月末時点では実験用のハウス栽培シャインマスカットが貯蔵されていました。昨年9月にはじまったというエクステンド・Xtend®の長期貯蔵では、どんな結果が得られたのでしょうか?

長谷部:貯蔵に向いているのは青果がいちばん元気な時期、シャインの場合は9月の中〜下旬くらい。それにあわせる形で、エクステンド・Xtend®での封入を昨年スタートしました。実のところ、モノにはよりますが冷蔵庫に入れておくだけでシャインはしばらくもつんです。実際にクリスマス、年末シーズンの大田市場には割りと出てますよね。そのかわり枝が枯れていたりして、もったとしても12月が限界だと言われています。しかしエクステンドに封入したシャインは、今年3月まで出荷できてほぼ完売の状態。もちろん途中で廃棄したりもあるんですが、3月10日の出荷分が最後だったので2ヶ月ちょっと延びた計算になります。

【参考】 シャインマスカット貯蔵5ヵ月半後の状態比較

鮮度保持フィルム エクステンドシャインマスカット

◎エクステンドによるガス組成(酸素・二酸化炭素量)および湿度の調整でシャインマスカットの鮮度を維持
◎保管条件は冷蔵倉庫(2℃設定)。エクステンド包装有無以外は同条件

山梨県におけるシャインマスカットの収穫期は、ハウス栽培は6月から8月上旬、路地栽培が8月下旬から10月上旬まで。冷蔵庫貯蔵との相性もよく時期をはずれても楽しめるフルーツになってきている。しかし毎年2月ごろになると市場からも姿を消してしまうそうだ。

長谷部:2月の上旬に大田市場からも無くなるんです。本当に姿を見なくなる。なので商品が市場にあるというだけで大きな強みです。さらに鮮度保持できて美味しさも変わらないわけですからね。ちょうどその時期は卒業シーズンとも重なり、多少値段が上がったとしても需要がある。決して大量ではないですが少量の需要、例えば私たちの大切なお客様である高級フルーツ店では確実に売れるようで、高い評価をいただいています。今年は3月10日が最終出荷だったわけですが、来年はあと2週間ずらしてお彼岸シーズンに当ててほしいとのリクエストをもらっています。

鮮度保持フィルムと冷蔵システムの併用が最適解

シャインマスカットの長寿命化には欠かせない包材となったエクステンド。冷蔵システムにあわせて、鮮度保持フィルムの併用を薦められたのがきっかけだったそうです。

長谷部:業務用冷蔵庫の導入と同じタイミングで、日栄インテックという会社の『スーパークーリングシステム』も設置したんです。これは冷蔵庫内部にパネルを貼って鮮度保持の機能を持たせるという資材です。そのメーカーさんに『鮮度保持なら併せて使ったほうがいいですよ』とエクステンドを紹介いただいたのがはじまりです。

エクステンドは北海道メロンで長期貯蔵の実績があり(参考:「鮮度保持フィルム エクステンドで“美味しさ長寿命化”食ビジネスの常識が変わる」)これまでもホクレン(ホクレン農業協同組合連合会)主導で実験を重ねながら実用化につなげてきた。その過程で「スーパークーリングシステムとエクステンドとの併用」が最も長持ちするという実験結果が得られており、いま注目すべきMA包装資材としてエクステンドの口コミが広がったとのこと。

長谷部:まずはエクステンド・Xtend®の代理店である三井物産プラスチックさんに連絡をして、サンプルをいただきました。三井物産プラスチックさんには、最初に封入の仕方などを指導してもらって、今でも包装内の温度やガスのチェックに頻繁に通っていただいたり、環境にあったやり方を考えてもらったりしています。昨年からの貯蔵分で『これはいける』と実感できたので、今年は個包装をやってみようと思っています。というのも、5kgの袋に何房も入れた梱包だと、1房取り出すときにも全部開けちゃうことになる。その瞬間、他の房が全部ダメになっちゃうわけです。私たちはBtoCのビジネス領域も大きいので、個包装がうまくいけば大きなビジネスチャンスになると思っています。

ガスを調整し長寿命化する「MA包装」

MAとはModified Atmosphere(ガス置換)の略で、包装内のガスを調整して青果などの長寿命化をかなえる技術。これを応用して生まれたMA包装が鮮度保持フィルム「エクステンド・Xtend®」であり、長期貯蔵による青果の旬の延長、フードロスやCO2削減への貢献が期待されている。

鮮度保持フィルム エクステンド シャインマスカット

鮮度保持フィルム エクステンドシャインマスカット

青果の長寿命化がもたらすものとは

「最初からシャインマスカットの長寿命化、高付加価値化を考えていたわけではない」と語る長谷部さん。その考えにいたるきっかけとなったのは、青果の大量廃棄だったそうです。

長谷部:あらためてお伝えしておくと、私たちの一番のビジネスは、生産者さんが大切に育てた青果の売り先を見つけること。さらには伝票の発行から、最後のクレーム対応まで、生産者さんの本業とは違うところを一手に引き受けています。出荷時期というのは、一年間一生懸命やってきて一番忙しい時期。みなさん夜も寝ないで朝から忙しくやってるんですけど、それでも間に合わない。最終的に手が回らなくなり、大量廃棄を決断する生産者さんもいる。そんな残念な状況を目の当たりにしてきて、何か手段はないか?とずっと考えてきたんです。出荷時期をずらしてみてはどうだろう?というアイデアからはじまり、業務用冷蔵庫の導入につながった。その先に、エクステンド・Xtend®との出会いがあったわけです。

今回のエクステンド・Xtend®の取材を通して見えてきたのは、フードロス削減、美味しさの長寿命化、販路拡大といったメリットばかりで、この取り組みから新しいビジネスの世界が拓かれるのではないか?そんな予感さえしてくるものでした。最後に、長谷部さんに今後のことを語っていただきました。

長谷部:私たちはひとつの生産者さんとの付き合いが長いので、品質も安定してるんです。さらにエクステンドで長寿命化することによって、付加価値が高まって消費者の方も喜ぶ。もともと目指していたのは大量廃棄問題の解決だったわけですが、いまとなっては生産者も、小売店も、消費者さんも、みんなを笑顔にできるビジネスになりつつあります。これからは、エクステンドに入れたまま海外に輸出したり、そういった方面も広げていきたいなと思っています。すごく楽しみです。

鮮度保持フィルム エクステンドシャインマスカット

株式会社katerial
代表取締役社長 長谷部 福美さん

株式会社Katerial(カテリアル)
シャインマスカットや桃などの旬な果実、地元産のワインなど、山梨の雄大な自然の中で生まれた特産品を販売している。

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