素材を知る2025年12月8日
アドブルー/AdBlue(尿素水)とは?メーカーの特徴や違いを解説

ディーゼル車の排出ガスに含まれる窒素酸化物を無害化する「アドブルー」。近年の環境規制強化により需要が高まる一方で、品質や供給力の違いが車両の性能や事業継続に直結する重要な選定ポイントとなっています。本記事では、アドブルーの仕組みと選び方、信頼される製品の条件について詳しく解説します。
アドブルーとは?

アドブルー(AdBlue®)とは、ディーゼルエンジン車の排出ガスを浄化するために使用される尿素水のことです。成分は尿素32.5%と純水67.5%で構成されています。無色透明で毒性もなく、取り扱いも比較的安全な液体です。アドブルーという商品名を使用できる高品位尿素水は、ドイツ自動車工業会(VDA)から商標を取得、または認証を受けた製品のみとなります。ただ、日本国内にはアドブルーと同じ規格に基づいて製造されているものの、別名で販売されている尿素水もいくつかあります。
アドブルーは、SCR(選択的触媒還元)システムという排ガス処理装置に使用され、排出ガス中の有害な窒素酸化物(NOx)を無害な窒素(N2)と水(H2O)にします。この仕組みにより、大気汚染の主要因とされるNOxの排出量を大幅に削減することが可能になります。

※三井化学様のサイトより流用
この技術は、日本の「ポスト新長期規制」やヨーロッパの「ユーロ7」など、厳しい排出ガス規制に対応するために不可欠であり、トラックやバス、建設機械など多くのディーゼル車に広く搭載されています。
アドブルーは走行距離に応じて消費されるため、定期的な補充が必要です。補充を怠るとエンジンが始動できなくなる車両もあるため、安定した供給と品質の高い製品の選定が重要となります。また、高品質なアドブルーを選ぶことで、SCR装置内部での結晶化や詰まりといったトラブルを防ぎ、エンジンや排気システムのパフォーマンスを保つことができます。だからこそ、信頼性のあるメーカーの製品を選ぶことが、安全運行と環境保護の両立に直結するのです。
アドブルーのメーカーごとの違いとは?

基本的な成分が同じであっても、アドブルーやその他の尿素水には、メーカーごとに違いがあります。その違いは主に以下の3つの観点で顕著です。
1. 品質の違い
アドブルー中でも、JIS K2247-1(*1)の認証を取得した製品が、より高品質で安心してご使用いただけます。これらの基準では、尿素濃度(32.5%)の正確性に加え、水の純度(脱イオン水レベル)や不純物(微量金属、ビウレットなど)の濃度が厳しく規定されており、SCRシステムの正常な稼働を守るために欠かせない品質が確保されています。そのため、アドブルーと冠した製品の中でも、JIS認証品は品質が保証されていると考えてよいでしょう。
一方、ノーブランド品や「安価な尿素水」として流通する非準拠品の中には、不純物が含まれていたり、濃度にばらつきがあったりするものも存在します。このような製品を使用すると、排ガス浄化性能が低下するだけでなく、排気システムの結晶化・目詰まりなどの深刻な不具合につながる可能性があり、場合によっては数十万円規模の修理費が発生することもあります。
(*1)JIS K2247-1と国際規格ISO 22241-1は同一内容です。従って、海外SCRシステム搭載車両にも安心してご使用いただけます。
2. 製造拠点・原料供給の違い
アドブルーを選ぶ際には、メーカーごとの供給体制の違いにも注目することが重要です。とくに近年は、世界的な尿素原料の価格高騰や輸出規制の影響により、製造・流通に関する不安定さが表面化しています。実際、2021年には中国が尿素の輸出を一時制限したことで、尿素水の国内での供給不足が懸念されていました。中国産原料に依存するメーカーでは、納期の遅延や在庫不足が発生した場合の対策も検討されています。
一方で、国内に自社プラントを構え、原料調達から製造、充填、検査、出荷までを一貫して国内で完結できる体制を持つメーカーであれば、こうした外的リスクの影響を最小限に抑えられるため、安心して長く使えるはずです。
3. 配送ネットワークの違い
アドブルーは、定期的な補充が必要な消耗品である一方で、突発的な補充ニーズが発生しやすいという特徴も持っています。とくに物流、建設、農業といった分野では、稼働状況や季節要因によって急な使用量の変動が生じるため、どのタイミングでも確実に届く体制が、製品選定における大きな判断基準になります。
こうしたニーズに応えるには、メーカーや販売代理店の配送体制や対応スピードが極めて重要です。しかし、メーカーによっては在庫拠点が限られていたり、緊急出荷に対応していなかったりするケースもあり、日々の業務に影響を与える可能性があります。
一方、全国に自社または提携の在庫拠点を展開し、緊急時でも柔軟な配送対応が可能なメーカーであれば、計画外の補充依頼にも迅速に対応することができます。また、受注から出荷までのリードタイムが短いメーカー、あるいは配送状況をリアルタイムで追跡できるシステムを整備しているメーカーであれば、現場側も安心して運用計画を立てられるでしょう。
アドブルーを選ぶ際の基準とは?
アドブルーを選ぶ際には、価格だけでなく性能面など多角的に検討することが重要です。以下の4つのチェックポイントを参考にしてください。
1.国内規格の認証を得ている
アドブルーは、JIS K2247-1という尿素水に関する日本産業規格(JIS)に認証された製品であれば、不純物濃度や濃度精度、保管安定性などの厳しい基準を満たしていることが保証されています。このJIS認証を得ている製品は、SCR装置を安全かつ安定して作動させるうえで信頼できる品質を備えており、安心してご使用いただけます。
2. 原料から国内で製造している
アドブルーの需要はトラック輸送の稼働率に直結しているため、安定供給が絶対条件です。海外の尿素を使用している製品は価格が安い場合もありますが、輸送中の温度変化による品質劣化や、港湾混雑・国際情勢の影響による納期遅延などのリスクを伴います。とくに災害時や緊急時に備えたBCP(事業継続計画)対策としては、国内工場での一貫生産体制を持つメーカーを選ぶことが重要です。
3. 品質検査体制が整っている
アドブルーは高度に精製された製品であり、わずかな不純物の混入や濃度のズレでも、SCRシステムに結晶化や詰まりといった重大な障害をもたらす可能性があります。そのため、全ロット検査を実施し、品質が担保されているかどうかが、製品の信頼性を見極める鍵に。加えて、検査データを迅速に開示できるメーカーであれば、万が一のトラブル時もスムーズな対応が期待できます。
4. 配送スピードが信頼できる
アドブルーの在庫切れは、車両の稼働停止という最悪の事態につながりかねません。突発的な需要やトラブル時にすぐ対応できるよう、全国に配送ネットワークを持つメーカーや販売代理店を選ぶことが重要です。とくに、当日出荷や緊急配送に対応できる体制が整っている場合、安心感が大きく違います。配送のリードタイムや対応エリア、在庫管理体制についても事前に確認しておくとよいでしょう。
三井化学のアドブルーで「もしも」に備えよう

三井化学のアドブルーは、品質・供給・サポートのすべてにおいて高い信頼性を誇り、多くの企業に選ばれています。アドブルーの原料となる尿素は、三井化学が年間35万トンという国内最大級の生産能力を有しており、全国20か所の配送拠点を活かした体制により、常に安定した供給が可能です。
さらに、JIS認証を取得した国内9工場で生産され、全ロットでの厳格な品質検査を実施。不純物による結晶化やSCRシステムでの詰まりを防ぎ、車両の安定稼働を支えます。また、10Lのバッグ・イン・ボックス(BIB)から専用IBCユニットまで、用途や保管環境に応じた多様な容器が揃っており、現場のニーズに柔軟に対応できる点も魅力です。
加えて、三井物産グループの情報ネットワークを活かし、自然災害や地政学的リスクへの備えとして、BCP(事業継続計画)支援も提供。製品だけでなく、企業活動そのものを支える体制が整っています。
アドブルーの選定は、車両の安全性と企業の信頼性を守る重要な意思決定です。だからこそ、実績と信頼性に裏打ちされた「三井のアドブルー」が、多くの現場で選ばれ続けているのです。
アドブルー不足に備えたい、アドブルーの詰まりを防ぎたい、短納期のメーカーを探している、国産のアドブルーを使いたいといったお悩みのある企業様は、ぜひお気軽にお問合せください。







