古賀:改めてご紹介しますが、今回お話を伺う萩原工業は、もともと弊社のお客様であり、現在はパートナーとして共同研究などでタッグを組んでいる企業です。プラスチックリサイクルの先進的な取り組みをされているため、笹原さんには弊社サーキュラーエコノミー委員会主催の社内勉強会でも講演を行っていただくなど、多方面でご協力いただいています。
さて、前回は
ブルーシートのリサイクルの取り組みについてお話を伺いましたが、今回は複合材料リサイクルの取り組みについてご紹介したいと思います。
そもそもブルーシートのメーカーである萩原工業が複合材料リサイクルに着手したのは、ブルーシートリサイクルの研究成果を広く公開しており、それを見た企業から相談いただいたことがきっかけでしたよね。
笹原:そうですね、ブルーシートリサイクルの情報を公開したことで、多層フィルムや各種貼り合わせ製品などをはじめとする、複合材料製品のリサイクルに関する相談や問い合せも増えてきました。
古賀:萩原工業では、ブルーシートのリサイクルのための装置を自社開発しているので、プラスチックリサイクルに関して悩みのある企業からたくさん問い合わせが来るのでしょうね。
笹原:印象としては、弊社の事業と完全に同じ分野というよりは、今のプラスチック業界全体に共通する悩みが多いように思います。複合材料のリサイクルに関しても、それまで弊社ではまったくやったことがなかったのですが、問い合わせを受けてやってみよういう感じでした。
古賀:萩原工業らしいですね。まさに創業者の理念を体現されています。
笹原:創業者の口癖が「おもしれぇ 直ぐやってみゅう」(岡山弁)なので、面白いと感じたことはすぐやってみるという社風なんですよね。
古賀:一言で複合材料とまとめていますが、正確には二種類ありますよね。まずは種類の異なる複数のプラスチックが組み合わされたプラスチック多層素材、そしてプラスチックだけでなく、紙やアルミニウムなど異素材が込み合わされた多層素材ですが、やはり異素材の分離が一番の課題だったのでしょうか。
笹原:技術的には、異素材の分離というのは非常に難しいですね。前回の記事で、1986年からドイツの濾過装置メーカーと提携して機器の国内販売を行っており、その濾過技術を用いたプラスチックのリサイクル装置を作っていた話をしましたが、異素材の分離に関しては、樹脂の溶融温度差を利用した濾過装置による分離を挑みました。しかし、その構成比率によっては押出量に対する濾過面積が不足したり、過大な濾過面積による樹脂滞留によって樹脂が劣化したりするなど、多くの課題がありました。
試行錯誤を続けるなか、時代と技術は進歩するもので、提携ドイツメーカーから、新型のロータリー式分離装置でヨーロッパの飲料用アルミ付き紙パックのリサイクルを試みたところ、ポリエチレンと紙、アルミニウムを分離させることに成功したという報告を受けたのです。
古賀:これまで廃棄処理せざるを得なかった飲料用アルミ付き紙パックから、ポリエチレンと紙、アルミニウムを分離できたのはすごい成果ですね。そこからさらに技術開発を進めているのでしょうか。
笹原:現在は、当社においても同濾過装置を用いたテストラインの準備中で、2024年2月頃に試験稼働の予定です。ゆくゆくはアルミを製品原料に戻せるレベルまで、分離技術を引き上げたいと考えています。
これに加え、融点の異なる樹脂分離にもチャレンジしていきます。まだ技術開発中ですので、これからさらに分離の精度を上げていく予定です。