業界を知る2022年10月3日
「プラスチック資源循環促進法」を分かりやすく解説!-【前編】
2020年7月にレジ袋が有料化されるなど、日本においてもプラスチック資源循環への取り組みが広がり、人々の関心を集めています。このような動きは「プラスチック資源循環戦略」に基づいて進められている措置の一つです。同戦略に基づき、2022年4月、「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。プラスチック資源循環促進法とは何か、そして私たちに求められる対応について解説します。
プラスチック資源循環促進法とは
2022年4月1日に施行された「プラスチック資源循環促進法」
プラスチック資源循環促進法の正式名称は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」といい、2022年4月1日に施行されました。 1907年に発明された合成樹脂=プラスチックは、第二次世界大戦による金属の不足をきっかけに、広く民間に使用されるようになりました。1975年には世界では5000万トンのプラスチック製品が製造されていましたが、2015年には4億トンを超え、現在ではさらに多くのプラスチック製品が製造されています。 プラスチックは、成型の容易さや軽さなどのメリットも多く、スマートフォン・自動車の部品や日用品、包装用品、繊維、衣類、機械部品や医療機器に至るまで非常に多くのものに使用されています。 さらにプラスチックの使用は、密閉ができて軽い包装による食品ロスの削減や、金属部品の樹脂化を通じた軽量化による自動車などの燃費向上など、環境への貢献という側面も持ち合わせています。 しかし一方で、プラスチックは石油を原料としているため、資源の枯渇問題に加え、生産時や廃棄時における温室効果ガスの発生や、世界における廃プラスチックの低い再利用率、海洋プラスチックによる環境汚染など、世界的な環境負荷の高さも問題になっています。 日本は世界に先駆けてプラスチックのリサイクルを推進し、リサイクルや焼却時に発生する熱の再利用も進めています。その結果、廃プラスチックの有効再利用率が85%を超えるなど、非常に高い再利用率を達成しています。一方で、1人当たりの容器包装廃棄量はアメリカに次いで世界で2番目に多く、日本におけるプラスチックの利用状況が世界の課題に対し大きな影響を持っているのも事実です。
2030年までに「使い捨てプラスチック排出を25%抑制」などが掲げられる
現在、世界各国で気候変動への対応を求められており、SDGsの推進などにより、環境対策は避けて通れない重要な課題となっています。そこで日本では2022年4月からプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律を実施することになりました。 日本においてはリデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)からなる3Rを引き続き実践していくことに加え、リニューアブル(Renewable)を重点戦略としたプラスチック資源循環戦略を立て、製品の設計から廃棄物の処理まで、プラスチックのサプライチェーン全てにおける資源の循環等の取組を促進することを目標としています。 ここでは、2030年までに包装容器の6割をリユース・リサイクルすることや、2030年までには使い捨て(ワンウェイ)プラスチックの排出を25%抑制することなどが掲げられています。そのため、製品の設計や社会のサービスにはさまざまな変化が求められ、さらにバイオプラスチックの導入も進められています。
プラスチック資源循環促進法による設計の変化
「材料の変更」「材料の使用量削減」「再利用しやすくする」がポイント
プラスチック資源循環促進法により、製品の設計や企画にも変化が求められます。3R+ Renewableを実現するために求められる変化の要点をまとめると、次の3点になります。
- 材料の変更:バイオプラスチックの利用や他素材への変更、再生材の利用
- 材料の使用量削減:包装の簡易化や、買い換えなくて済むように長く使える設計
- 再利用しやすくする:部品の再利用、単一素材化、分解の容易化など
バイオプラスチックとは生分解性プラスチックや、植物由来の原料(バイオマス)を使用した環境にやさしいプラスチックの総称です。プラスチック資源循環戦略に基づき、日本ではバイオプラスチック導入ロードマップが策定されています。 このロードマップでは、2030年までにバイオマスプラスチックの使用量を現在の40倍である約200万トンにまで増やす目標が掲げられています。このようなバイオプラスチックの使用は海洋汚染や資源の枯渇問題への対策になります。
これからのプラスチック製品の開発には、様々な工夫が必要
今後プラスチック材料の使用量削減も重要な課題の1つです。 既存のプラスチック部品を軽量化し、プラスチック包装製品の簡易包装化、さらに従来は使い捨てだった製品を長寿命化させるなど、製品の設計から変更することが求められるようになります。 例えば、2022年1月には、包装に使用するプラスチックの量を削減するため、ウィンナーの包装が巾着型から封筒型に変更され、話題になりました。ペットボトルのラベルをなくし、ペットボトルそのものの厚みを減らす取り組みなども盛んに行われています。他には、ボールペンの芯を取り替えられるよう設計を変更したり、芯の販売ルートを整えたりすることで、使い終わったボールペンでも芯だけを買い換えれば繰り返し使用でき、ペン本体の長寿命化が実現できます。 このようなプラスチックの使用量削減も、プラスチック資源循環促進法に則った活動の一環です。 例えばペットボトルをリサイクルに出す際には、ボトル本体とラベルを分離しなければいけません。 しかし、もしもボトルとラベルが同じ素材であれば、分離せずにリサイクルに出せるようになります。 このような単一素材化は、リサイクルしやすいRenewableの取り組みといえます。 また近年では醤油などの調味料のプラスチックキャップが分別しやすい構造になりました。これは分離の容易化に該当します。私たちが家庭で使う製品だけでなく、工業製品などにおいても、このような単一素材化や分離の容易化による再利用しやすくする工夫が、今まで以上に進んでいくでしょう。
まとめ:環境負荷を軽減するための「プラスチック資源循環促進法」
プラスチック資源循環促進法は、温室効果ガスの発生や石油資源の枯渇、海洋汚染といったプラスチックによる環境負荷を軽減することを目的に2022年4月に施行されました。これにより3R+ Renewableというプラスチック資源循環を進めるためのさまざまな取り組みが行われています。製造から廃棄まで、製品のライフサイクルを通してのリサイクル促進やサービスにおける使い捨てプラスチック製品提供の制限、バイオプラスチック導入の促進などがこれに該当しています。